樹安ママの発達障がいな毎日

発達障がいのあるあるを、時にはゆるく、時にはマジメに。

二次障がいに立ち向かうこと

発達障がいの「二次障がい」とは…発達障がいの特性を正しく理解してもらえず、自分のことを受け止めてもらえず、屈折した思いを抱えたまま成長したために…身内に暴力を振るうなどの反発をしたり、精神を病んでしまったりすることを言います。

発達障がいも今はだいぶ理解してもらえるようになりましたが、ひと昔前はまだまだ「その子のわがまま」として捉えられることも多く…今の高校生から上の世代の人たちの中には、この二次障がいを抱えて苦しんでいる人も多いと聞きます。

 

私が彼女と出会ったのは1〜2年前のこと。彼女には発達障がいを抱える息子が2人、1人は幼稚園児で、もう1人は高校生。この高校生のお兄ちゃんが二次障がいを起こしていて、彼女は彼の家庭内暴力に苦しんでいました。

彼女は、お兄ちゃんが幼い頃に彼の特性に気づいてあげられなかったこと、そのことで彼が学校の先生からひどい仕打ちを受けたことに負い目を感じていました。だから、日頃の彼の暴言や暴力を受け止めるしかなかったのですが…毎日毎日繰り返される、あまりにひどい暴言や暴力の数々…出会った当時の彼女は、身も心もどん底の状態でした。

 

そんな彼は学校に行くのもままならない状況、時には問題行動を起こすこともあり、彼女はしょっちゅう先生に呼び出されていたそうです。

彼女の話を聞くと、彼は母親である彼女にばかり辛く当たるのだそうで、私のことがそんなに嫌いなんだ、私のことがそんなに憎いんだ、と落ち込んでいたのですが…でも、本当に嫌いなら、母親にばかり嫌がらせはしないですよね。これは…彼の愛情の裏返し!本当はお母さんにもっと愛されたいのだけれど、自分の気持ちに蓋をしてしまっていて…どうしたらいいかわからなくて、自分でもどうしようもなくて、辛く当たってしまうのだと、私は彼女に言いました。

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母親である彼女も辛いけど、いちばん辛いのは二次障がいで苦しんでいる彼本人だと思います。決定的に愛が足りない…でも、ここまでこじれてしまった彼の気持ち…残念ながら、なかなか元には戻らないのです。

 

彼女は辛い日々の中でも、息子のことを諦めてはいませんでした。学校の先生や児童相談所、ケアマネジャーさんなどに相談しながら知恵を借り、彼の自立への道を探っていました。

そして彼女の努力が実ったのか、何と彼の就職先が決まったのです!やったー!私もその知らせを聞いて、心からうれしかったです。彼の自立への道が見えてきて、彼女もやっと希望を持てたと思います。(もちろん彼自身も自分の人生を諦めず、自立のために就職活動を頑張ったのだと思います。)

そしてこの春、彼は無事に高校を卒業しました。家を離れて、家族と離れて、彼は自立への第一歩を踏み出しました。母親である彼女、ホッとした気持ちと、まだまだ心配な気持ち、息子の巣立ちに寂しい気持ちと、いろいろな感情が込み上げているのではないか?と思います。

 

彼女は今、お兄ちゃんのことを教訓にして、下の息子の療育を頑張っています。うちの子供たちと仲良くさせてもらっています(^_^)

二次障がい、いろいろなケースがあるかと思いますが、決定的に足りないのはその子への愛情です。息子を諦めなかった彼女がいい方向へ進んでいったように、苦しくても寄り添い、お節介でも愛を注ぎ続けること…これしかないと思います。

あとは、家族の中であまりに関係がこじれてしまっている場合、第三者の助けを借りて、家族があまり無理をしすぎないのも大事だと思います。特に母親が負い目を感じるからと頑張りすぎて、共倒れになってもいけないので、ね。

 

今もどこかで苦しんでいる、二次障がいの当事者のために…私はこのエピソードをどうしてもお伝えしたかったのです。ここに載せることを許可してくれた彼女、本当にありがとう。

息子たちのこと、家族のこと、あまり背負い過ぎないでね。